子育て・育児や対人関係に役立つ心理学のテクニック

「子育て・育児や対人関係に使える!」と感じた心理学のテクニックをご紹介します♪

発達障害について⑦:発達障害の特性をカメラの例えで考える(2)

(1)で、情報の入力・出力についてをカメラの例えを使って説明しました。

加えて、もう1つカメラの例えを使って考えるべきポイントがあります。

 

それは、その『カメラにムービー機能が付いているか』ということです。

ムービー機能とは

静止画しか撮影できないカメラで捉えてしまうと、情報は断片的なものになってしまいます。

下図が、静止画のみで情報を捉えているイメージ図です。

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静止画だけで情報を捉えると、切り取った部分的な情報1つ1つで判断することになってしまい、『連続性』ということを考えることが難しくなってしまいます。

 

図のように悪い局面に注目してしまうと、それよりも前にあった良い部分は見えなくなってしまい、「今までずっと悪い状態だった!」と捉えたりしてしまいます。

 

反対に、下図がムービー機能で捉えた場合のイメージ図です。

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ムービー機能が使えると、過去から現在への繋がりや、現在から未来への展望といった『連続性』を考えることができます。

図のように、関連する様々な情報を「良い面も悪い面もあった連続したもの」と捉えることができます。

 

幼児期のお子さんは、まだムービー機能を獲得していないと考えられます。

そのため、直前までおもちゃ売り場で「買って!」と愚図っていても、お母さんに「ハッピーセットを食べて帰ろう。」と提案されたりすると、ケロッと見事に機嫌が直ったりします。

お友達とのケンカと仲直りも1日に何回も繰り返したりもするでしょう。

これらのことは、静止画のみ、場面場面でのみの捉え方によるものであると考えられます。

 

そして、発達障害を中心とした配慮が必要なお子さん達の中には、考える力は向上したが、「ムービー機能の獲得は未完成」というお子さんたちがいます。

ムービー機能が備わっていないと・・・

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では、ムービー機能が備わっていないカメラで生活することになると、どのようなことが起こるのでしょうか?

 

(1)切り替えが早い

ムービーで捉えることができないということは、物事やエピソードを写真の連続のように捉えるということになります。

そうすると、見ている写真が替わることで、気持ちや考えをコロッと切り替えることができてしまいます。

そのため、目の前の状況が替わるだけで、それまでのことがなかったことのように切り替わったりして、対応している大人が拍子抜けしてしまうようなこともあると思います。

 

(2)勘違い・思い込みをしやすい

ムービーで捉えることができないと、物事の理解・判断を静止画のみからすることになります。

そのため、静止画と静止画の隙間にある情報は入ってこず、手元にある情報だけで判断することになってしまうため、勘違いをしやすくなってしまいます。

 

また、何かを強く思い込んでいるような状況では、意図せずに自身の思い込みを強めるような静止画だけを集めてしまうこともあり、思い込みが強まってしまうこともあります。

 

ムービー機能が備わっていないお子さんと接するときのポイント

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(1)ムービー機能を補う

<発達障害の特性をカメラの例えで考える(1)>と同様に、見えていない部分を補うということが基本的な支援となります。

 

ムービー機能が備わっていないお子さんのムービー機能を補うということなので、イメージとしては、静止画を増やすことによって見えていない情報を少なくするという感じでしょうか。

静止画の量を増やして、パラパラ漫画のように静止画の連続によって情報の洩れや連続性を補うということは可能だと思います。

支援者側の負担はとても増えますし、限界もありますが…。

 

以前関わった特別支援学校の先生は、「忘れちゃいけないからメモしておくね」と、お子さんとの関りをお子さんの目の前でとにかくメモしていくという対応をされていました。

お子さんもその先生がいつも記録してくれていることは分かっているので、先生からメモを見せながら「ほら、あの時あなたはこう言ったのよ」と説明されると、口頭だけの時よりはるかに高確率で納得してくれていました。

支援者側からしたらメモを取るという大きな負担が増えますが…。

 

口で言うのは簡単なのですが、支援者側がこのようなひと手間をする/しないによって、発達障害のお子さんの生活のしやすさはかなり変わってくると感じます。

ひと手間とはいえ、毎日積み重ねていくことは本当に大変なので、「口で言うのは簡単ですが」なのですが…。

 

(2)ムービー機能が備わっていないことを利用する

状況によっては、お子さんのムービー機能が備わっていないことを利用して困った状況を早く打開することも可能だと思います。

お子さんが、何か嫌なことがあって愚図っているときや、納得がいかないときなどには、その状況とは違う情報を提示することで、お子さんが切り替わることを促すことも可能であると思います。

 

ムービー機能が備わっていないお子さんは、目の前にある静止画の影響を非常に受けやすく、反対にいうと目の前にない静止画の影響は非常に受けにくいです。

そこで、目の前の静止画を良いものに変えてあげるだけで、それまでの嫌だったことは引きずらず、その目の前の静止画に基づいて切り替えることができます。

 

大切な場面では、当然しっかりお子さんに説明して納得してもらうことが大切ですが、お子さんや周囲の方のその後の生活に影響のないような場面であれば、「解決させる」ではなく、「切り替えさせる、流す」という対応でも良いと思います。

 

ただし、「暴れたら良い物がもらえる」といった誤った学習をさせないように気を付ける必要はあります。

 

まとめ

カメラの例えを使うと、人がその時のその場の状況を把握するためにどのようなことをしているのかや、過去と現在・未来の連続性を捉えるということがどういうことかをイメージしやすくなったのではないかと思います。

 

カメラの例えは、それらをイメージをしやすくすることで、そのお子さんの特性の把握、得意な面を活かす、苦手な面を補うといったことをやりやすくする考え方であると思います。

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