人は、様々な情報を入力し、得た情報に基づいて遂行(出力)します。
(しっかりした認知心理学ではもっと細かく分けますが…。)
*コチラも参考にどうぞ。
そしてこのブログでは、発達障害等の配慮が必要なお子さんにある情報の入力・出力の難しさについて、カメラの例などを用いながら説明させていただきました。
今回は、そのような難しさがどのような状態や行動として表れてしまうのかを説明させていただきます。
感情のコントロールの難しさ
情報の入力・出力が難しいと、良い情報が入ってこなかったり、悪い情報ばかり入ってきたりということがあります。
ここには、人間というか、生物に組み込まれたメカニズムも影響しています。
生物は、一番の仕事が「生き残り、子孫を残すこと」です。
そのため、命の危険にさらされる可能性のあることに注目し、優先的に記憶されるようにできているそうです。
なので、おいしい焼き肉の味は忘れてしまっても、今後二度と食べずに済むように腐った食べ物の味などはちゃんと覚えているそうです。
つまり、良いことよりも、悪いことに注目しやすいし、記憶に残しやすいということです。
情報の入力・出力の難しさと生物としての悪いことに注目しやすいメカニズムが合わさると、悪い情報ばかりに注目することになり、イライラしやすい情報ばかり入ってくる・気持ちを落ち着けるための情報は入ってこないという状態になってしまうため、感情をコントロールすることはとても難しくなってしまいます。
勘違い・思い込みをしやすい
情報の入力・出力の難しさがあると、どこかのカメラがOFFになっている中で判断することになったり、カメラが機能していても散漫さ・衝動性の高さから最後まで確認せずに判断してしまったりして、勘違いをしてしまうことが多いです。
また、自身はカメラがOFFになっていることを自覚していない場合が多いため、自分なりにすべての可能性を考えたつもりになっていて「~に違いない。」と思い込んでしまうこともあると思います。
なお、特に先生との関係において、相手の考えや状況を捉える2カメ・3カメを使わずに、自分ばかりが注意される状況を自分目線からのみ見て、「○○先生はいつも□□くんの味方をする。」と思い込んでしまって先生との関係がうまくいかなくなるということが起こりがちです。
嘘をつく・約束を破るという結果になりやすい
これには、『長期報酬』や『刺激のつられやすさ』という考え方の影響が大きいと考えられます。
先のことを考えずに、目先の怒られてしまいそうな状況を回避しようとすることだけを考えてしまうと、「嘘をついてやりすごそう」という考えに至ってしまうこともあるでしょう。
言われたことをやろうとしていたけど、他の刺激につられて他のことをやりだしてしまって、結果的に約束を破ってしまうことになることもあるでしょう。
また、3カメの機能の弱さから約束を守ることの重要性を理解できていないという可能性もあるかもしれません。
なお、他の刺激につられて約束を破ってしまい、それをごまかすために嘘をつくという合わせ技もよくあるのではないでしょうか。
無計画なことも、計画的な犯行だと思われることがある
情報の入力・出力の難しさがあるお子さんは、カメラの機能の問題・イマジネーションする能力の問題・刺激へのつられやすさなどの様々な特性の影響で、その時の気分・感情・雰囲気を優先しやすくなります。
本人の特性を考慮しながら丁寧に話を聞いていくと「思いつきの連続」であるのに、周囲の大人は、特にそれが問題行動の場合には計画的な行動であると捉えてしまいやすいです。
例えば、「外出禁止と言われていたが、たまたま外から友達の声がしたときに親が外出していたために外に出てしまった。そして、友達に誘われて立ち寄ったスーパーでお菓子を買おうとしたが、急いで家を出たことで財布を忘れていたため、お店のお菓子を万引きした。」という場合に、大人は「親が外出するのを見計らって外に出て、お菓子を万引きするために店に入った。」というように捉えがちです。
どんな理由があっても悪いことをするのはだめなのですが、行動が起こった理由によって再発を防ぐためのアプローチは変わってくるので、やはりしっかり理解する必要があると思います。
そして、やはり大人は特に問題行動についてはワザとやっていると捉えやすいので、その子に必要以上に悪いイメージがついてしまいやすいです。
絶対に起こしてはいけない『二次障害』
上記のように、情報の入力・出力の難しさがあると、周囲の大人からは注意・指導・叱責といったことを受ける機会が増え、対人関係もうまくいかず、自分自身も様々なことに違和感や不全感を感じてしまうリスクが上がってしまいます。
このような状態が続くと、自尊感情は傷つき、被害的な考え方が頭の中を巡り、不登校・引きこもり・非行・暴力といった行動上の問題や、うつ・不安・強迫・対人恐怖といった心理的な問題に繋がってしまいます。
このような、
発達障害についての理解不足による不適切な対応により引き起こされた情緒の不安定・反抗的な行動・深刻な不適応の状態
(独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 植木田 潤 「二次障害の理解と対応」研修資料)
を『二次(的な)障害』と言います。
『二次障害』は、発達障害の特性、情報の入力・出力の難しさが引き起こしているのではありません。
『二次障害』を引き起こすのは周囲の不適切な対応です。
しかし、「発達障害の特性、情報の入力・出力の難しさ」は、『二次障害』を引き起こすような不適切な対応を招きやすいということは言えるでしょう。
『二次障害』を引き起こすことを防ぐために必要なことは、これまで説明し続けてきている『特性の正確な理解』と、それに基づく適切な対応です。
『二次障害』は、本人も家族も楽しいWin-Winな状態と最もかけ離れた状態です。
『二次障害』を防ぐだけでなく、本人も家族も楽しいWin-Winな状態を構築するための心構えや方法については、次回以降ご説明させていただきます。