発達障害を中心とした関わる際に配慮が必要なお子さんは、「しっかりしなさい。」や「気をつけなさい。」のような曖昧な声掛けでは、求められていることを理解することが難しかったり、自分なりに判断して行動して間違えたりということが多くなってしまいます。
そんな「お子さんに新しいスキルを身につけてもらう際の働きかけ」のポイントは、『正解を伝えて、できたら褒める』です。
『褒める』の部分は、そのままで「うまくいったことを褒めてあげてください」ということなのですが、その前の部分、『正解を伝えて』という部分は、2つの意味でとても重要です。
前回に引き続き、お子さんの特性を踏まえた上での関わる際のポイントとなることを説明しようと思います。
これから説明するお子さんと関わる際のポイントは、これまで焦点を当ててきた発達障害を中心とした関わる際に配慮が必要なお子さんに対してだけでなく、定型発達のお子さんも含めた全てのお子さんに対して有効なポイントであると思います。
もっと言ってしまうと、会社の部下や後輩など、支援する側とされる側、指導する側とされる側などに分かれる関係において、全ての支援する・指導する側の人にとって有効なポイントだと思います。
ただ、発達障害等のお子さんたちは、その特性に特徴的な部分が多いため、これから説明させていただくようなポイントを抑えた関わりをした時の効果は顕著だし、反対にいうとポイントを抑えない関わりをした際の難しさも顕著であると思います。
『正解』=やるべきことそのものズバリを正確に示したもの
『正解を伝える』とは、「やるべきことそのものズバリを正確に伝えてあげる」ということです。
発達障害のお子さんは、「しっかりしなさい。」や「気をつけなさい。」のような曖昧な声掛けでは、求められていることを理解することが難しかったり、自分なりに判断して行動して間違えたりということが多くなってしまいます。
このような時、曖昧な指示を具体的な「~しよう。」という言い方に変えてあげると、何をすべきかが明確になり、指示を遂行できる確率が格段に上がると思います。
例えば・・・
「しっかりシュートを撃ちなさい。」
→「ゴールの隅を狙って、グラウンダーの早いシュートを撃ちなさい。」
「車に気をつけなさい。」
→「交差点では左右を確認してから車が来ていなかったら渡りなさい。」
などです。
どの程度具体的にしなくてはいけないかは、お子さんの特性や経験・知識次第ですが、このような、何をすべきかが明確な指示を出し、お子さんがその通りにできたときにすかさず褒めてあげることを繰り返していくことで、身につけるべき行動の幅が拡がっていきます。
『正解を伝える』=『否定形を使わない』
『正解を伝える』ということのもう1つの大切なポイントは、『否定形の言葉を使わない』という状態になることです。
考えたら当たり前のことなのですが、否定形の声掛けは、正解を伝えることになっていません。
例えば、A~Eまで置く場所があるとき、「Bに置いちゃダメでしょ!」という指示は、どこに置くべきなのかを示していません。
定型発達のお子さんたちは、こんな場合に察して置くべき場所を察知するかもしれませんが、発達障害のお子さんたちは、この指示から本来すべき正しい行動を導き出すことはできません。
このような時、否定形の言葉を使わずに「Cに置こうね。」と肯定的な指示を出してあげれば、みんなCに置くことができます。
そもそも否定形の言葉は、言われて気持ちいいタイプの指示ではないと思います。
わかりやすく、しかも気分も悪くならない肯定的な伝え方で正解を伝え、それができたら褒めるということを繰り返すことで、気分を害することなく身につけるべき行動が身についていくでしょう。
まとめ
『正解を伝える』ということは、曖昧な指示や否定形の指示からすべきことを導き出すというイマジネーションする能力の苦手さを補った方法であると思います。
『正解を伝えて、できたら褒める』という方法は、「明確で具体的な内容を肯定的な言葉で伝える」ということと、それによってうまくいったらすかさず褒めるということを組み合わせた、発達障害のお子さんでも、定型発達のお子さんでも、新人社員でも、パートナーでも、指示を出される側の誰にとってもとてもやりやすく気持ちいい方法ですし、反対にどんな立場の指示を出す側の人にとってもやってほしいことをしてもらいやすい有効な方法であると思います。