子育て・育児や対人関係に役立つ心理学のテクニック

「子育て・育児や対人関係に使える!」と感じた心理学のテクニックをご紹介します♪

三つ子の魂百まで続く?続かない?

『三つ子の魂百まで』

=幼いころの性格は、年を取っても変わらないということ

(故事ことわざ辞典)

 これは、日本に深く根付いた考え方ですよね。

辞書は「幼いころの性格は」ですが、それが「幼いころの人格は」ぐらいの捉え方をされているようにも思います。

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そしてこの考え方が、

「保育園に入れてしまって良いのかしら・・・、一緒にいてあげた方が良いのかしら・・・?」と働くお母さんを不安にさせたり、

お子さんに不適切な経験をさせてしまった際に、親に激しく後悔させたりしてきました。

早期教育をした方がいいということにも影響があると思います。

 

『三つ子の魂百まで』・・・

『雀百まで踊り忘れず』というのもありますね。

 

これは、本当なのでしょうか?

今回参照させていただいた『子育ての知恵 幼児のための心理学』の答えは、

 

『んなこたぁない』です♬

 

タモさんになってしまったことに大した意味はないんですけど、でも、

 

「当然影響はするんだけど、全然そればっかりってわけではないよ♬」

 

というニュアンスなので、まぁ『んなこたぁない』ぐらいかなとは思います。

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この記事は、『子育ての知恵 幼児のための心理学(高橋恵子、2019)』から学んだことの記録です。 著者の高橋恵子氏は、現在聖心女子大学の名誉教授で、長年発達心理学の第一線で活躍されてきた方です。 高橋氏は本書について、“私の半世紀を超えた心理学の研究者としての、子どもの発達についての現時点での「結論」を書いたもの”と述べており、子育てにおける通説についての、科学に基づいた丁寧な説明がされています。 「子育てとはこうあるべきもの」という昔からある考え方に悩まされている方は、ぜひ手に取って頂きたい作品です♪

幼児期決定説

 発達初期の経験が生涯のありようを決めてしまうという考え方を『幼児期決定説』と言います。

 

『子育ての知恵 幼児のための心理学』の著者の高橋恵子氏は、『幼児期決定説』が広く浸透した理由として、

おとなが乳幼児期の成長に、ある種の生命の神秘を見ているからではないか

 と考えています。

 

乳幼児期の成長の速度はすさまじいですよね?

これを見たら、「この時期は人間としての「土台」が出来上がる大切な時期だ!」

となるのは無理もないかなと思います。

 

しかも、3歳までの時期のお子さんは、言語能力がまだまだです。

言葉でお子さんから確認することができないため、より想像が膨らむということもあったのでしょう。

 

実際の発達は「しなやか」

ここからは、『三つ子の魂百まで、んなこたぁない』の理由をご説明していきます。

 

そもそも憶えていられない

幼児の記憶についての研究は始まったばかりですが、記憶力という点からみると3歳ではまだまだ頼りないことが分かっています。

 とのことです。

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3歳というと、ようやく昨日のことについて話せるようになるくらいだそうです。

3歳までの記憶をその後もずっと留めておくということは難しそうです。

 

縦断研究

 縦断研究は、同じ人々を対象にして、一定期間ごとに同じ調査・実験を繰り返し、変化を見ていく研究方法です。

同じ人達をずっと追いかけていくので、時間の経過を伴う変化を調べることには適していますが、時間と労力がめちゃめちゃ掛かります。

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子どもの発達についての縦断研究は大きく2種類に分けられ、そのうちの1種類が「子どもの特徴を追っていく」というタイプのものです。

 

『子育ての知恵』ではアメリカのフェルス研究所による研究が紹介されています。

この研究は、約90人を対象に、誕生時からずっと48項目の特徴について追っていくものです。

結果としては、年齢を重ねても傾向が一致していたのは「受動的かどうか」ぐらいで、研究者の見解は、

人生の初めの3年間で見られた特徴からおとなになった時の知的能力や人格特性を予想はできないことが証明されている。

 というものです。

 

もう1種類は、「乳幼児期に受けた働きかけの効果が持続するのか」を見ていくというタイプです。

 

『子育ての知恵』では、アメリカの低所得者層の親子を対象とした、3~4歳対象の8か月の教育プログラムの効果を調査したものが紹介されています。

結果は、

3,4歳時の「知的領域」の教育効果はないが、社会生活や人間関係、つまり、「非知的領域」への働きかけの効果は長く続く

というものです。

 

しかし、この結果に対して高橋氏は、他の類似の研究の結果も考慮し、「非知的領域で見えたプログラムの効果は、一緒にプログラムを受けた母がプログラム終了後も関わりを継続したからだろう。」と考察しています。

 

幼少期の経験が大切なことは間違いない!

 縦断研究の結果を大雑把にまとめると、「発達初期の経験で生涯のありようは決まらない」ということが答えになります。

 

しかし、そればっかりではないということも言えると思います。

1つ目の研究では、幼少期からずっと続く特性もありましたし、2つ目の研究でも、親の関わり方が維持された結果、効果が長く続く分野がありました。

 

つまり、

『お子さんの性格・特性・能力といったものは、生まれ持ってのものの影響も受けながら、環境によって維持されも変わりもする。』

ということなのかなと思います。

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今回の記事ではその中で、『環境によって維持されも変わりもする』ということをテーマにしてきました。

 

この、『環境によって維持されも変わりもする』ということは、良いことも悪いことも、維持もされるし変わりもするということです。

 

良いことの例として分かりやすいものは、早期教育です。

 

幼少期から、お子さんに適した、またはそれ以上の環境を提供でき、それが継続できたとしたら、それは大きなアドバンテージになるでしょう。

 

しかし、幼少期のみでその後継続できなかったものについては、その数年間掛けたコストに見合う結果は得られないということです。

 

私も、習字を習っていたとは思えないひどい字をしています・・・。

急いで字を書き、習ったような字を意識しなくなった結果、丸っこくてちっちゃな字を書く大人になってしまいました。

 

このように、お子さんの特性・能力は環境の変化に伴って変化していきます。

 

同じことが、虐待のような悪い状況の場合にも言えます。

 

劣悪な環境で養育をされていれば、基本的な信頼感や自己肯定感は養われず、その後も環境が変わらなければ、不登校、非行、精神疾患・・・と続いていってしまうかもしれません。

 

しかし、発達の過程で環境が改善されると、そこから社会に適応した生活を送ることが出来るようになる場合も数多くあります。

 

私は虐待を受けた後で里親さんに養育されているお子さんと関りがある時期がありましたが、安心・安全な環境でぐんぐん成長していった里子が何人もいます。

 

また、もっと大きくなってから、良きパートナーと出会って劇的に安定するような方もいます。

 

お子さんの発達は、何もなければ連続しています

その点では、生まれてから死ぬまで同じ村で同じような生活をしていた時代なら、本当に「三つ子の魂百まで」だったのでしょう。

良い環境が続けば、ぐんぐん成長していきます。

反対に劣悪な状態が続けば、不適応の度合いは大きくなってしまうでしょう。

 

しかし、環境や状況が変わることで、お子さんの発達の様子は変わります。

お子さんの発達は、しなやか・柔軟です。

 

まとめ

 お子さんの発達は、環境が変われば変わります。

 

今、お子さんによい環境を提供できている親御さん、「今だけやってもダメですよ!ぜひ維持してください☆」

 

望ましくない状況だったり、望ましくない時期があった親御さん、「変われますよ!変えやすい所から変えていきましょう♬」

 

音感のように、臨界期というものがある分野もあるでしょう。

 

とはいえ、基本的には、「この時期が大事」というものではなく、「どの時期も大事」ということだと思います。

反対に言えば、プロとか超一流とかを目指すわけでないのなら、「逃してはいけない時期」もありません。

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「今までも、これからも」というスタンスで、お子さんには良い環境を提供し続けてあげたいですね☆

この記事は、『子育ての知恵 幼児のための心理学(高橋恵子、2019)』から学んだことの記録です。

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