子育て・育児や対人関係に役立つ心理学のテクニック

「子育て・育児や対人関係に使える!」と感じた心理学のテクニックをご紹介します♪

イヤイヤ期って何?自己って何?

お子さんのイヤイヤ期に悩まされた方、今まさに悩まされている方はたくさんいらっしゃると思います。 

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「イヤイヤ期は、自己が芽生える時期だから・・・」と言われます。

 

イヤイヤ期=第1次反抗期が発達のプロセスとして大切なことは間違いありませんが、最近の研究によると「自己が芽生える時期」というのは誤りのようです。

 

今回は、「イヤイヤ期って何なの?」「自己が芽生えるってどういうこと?」といったことを見ていきましょう♪

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この記事は、『子育ての知恵 幼児のための心理学(高橋恵子、2019)』から学んだことの記録です。 著者の高橋恵子氏は、現在聖心女子大学の名誉教授で、長年発達心理学の第一線で活躍されてきた方です。 高橋氏は本書について、“私の半世紀を超えた心理学の研究者としての、子どもの発達についての現時点での「結論」を書いたもの”と述べており、子育てにおける通説についての、科学に基づいた丁寧な説明がされています。 「子育てとはこうあるべきもの」という昔からある考え方に悩まされている方は、ぜひ手に取って頂きたい作品です♪

イヤイヤ期の頃には自己は出来ている

参照している『子育ての知恵 幼児のための心理学』によると、『自己』とは、

自分についての気づき

自分についての意識

自分がどのような人間であるかについて、本人が持っている自分についての意識

 です。

 

この「自分って何?」ということは、心の安定のためにはとても大切です。 

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移民と言われる人達は、自分のルーツをとても大切にしていますし、ドラマや映画でも自分の家系の真実を探るようなストーリーはたくさんありますよね。

 

小学校でも自分の幼少期や名前の由来を調べる授業があります。

また、様々な事情のお子さんが暮らす児童養護施設でも、「ライフストーリーワーク」といって自身の生い立ちを丁寧に振り返るような時間を持つことがあります。

 

人間は「分からない」ということをとても嫌います。

「分からない」と、危険があるかもしれない可能性が消えないからです。

であるならば、「自分が何なのか分からない」ということは、非常に心を不安定にしてしまいます。

 

人間の成長は、「自分って何?」ということが定まらずフワフワした時期を経て、最終的に『アイデンティティ』と言われる「私はこういう人間だ」ということを確立させるところにたどり着きます。

 

そしてイヤイヤ期は1歳半頃からの時期を指しますが、最近の研究によると、2歳前後にはすでに幼児なりの自己ができていることが明らかになってきたそうです。

 

参照している『子育ての知恵 幼児のための心理学』では、イヤイヤ期のことを

自己が強い主張を始めた興味深い時期

であるとし、

言葉で表現する能力が充分ではないために、すべての主張をイヤや泣きや地団駄で表現し、まるで反抗しているように見られがちですが、子どもの主張には子どもなりの理由がある

 と説明しています。

 

幼児期の自己の発達

自分の身体の発見

 乳幼児の自己の発達は、「自分の身体は自分のものである」という自分の身体の発見から始まります。 

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生後2か月ぐらいになると、自分の身体と母乳をくれる母親の身体が分離していることに気づくことができるようです。

自分の手を動かしてじっと見る「手かざし」が良く見られるのもこの時期です。

 

その後、歩き始める頃になると、自分の力での移動が可能となることで、乳児の身体の発見はさらに確かなものになります。

 

そして、2歳近くなると、鏡に映る自分を、「自分の身体だ」と認識出来るようになり、身体の発見は一通り完成です。

 

記憶と自己

 記憶する能力が備わってくると、過去の自分と現在の自分、そして将来の自分が繋がっているということが自覚できるようになります。

このことも、「自分とは?」を固めてくために必要なことです。

 

1歳半頃になると、目の前にない対象を頭の中に留めて置くことができるようになります。

この能力のおかげで、養育者が見えないところに行ってしまったときにも我慢することができるようになります。

 

その後3~4歳になると、大人が上手く聞き出してあげれば、過去の自分の体験を話すことが出来るようになります。

これは、経験を自分のものだとする自己が関わらないと成立しないことです。

 

言葉の役割

 生後19か月になると、自分に固有の名前があることが分かるようになります。

自分の名前があることで、自己についての経験をまとめたり、自分の意思を表明できたりします。 

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その後2歳頃になると、「~をしたい」や「~が欲しい」といった、自己をモニターした上での自分の考えを表現することが出来るようになっていきます。

 

そして3歳頃になると、肯定的感情・否定的感情をそれがふさわしい場面で報告できるようになってきます。

「私はこう思う」ということをしっかり理解しているということです。

 

このように、身体的・知的能力の発達と、周囲からの働きかけが相まって、幼児なりの「自分って何?」が確立されていきます

そして、この自己を基盤として、思春期・青年期とどんどん複雑な自己を作り上げていきます。

 

イヤイヤ期ってどういう状態?

 乳幼児期の自己の発達の次は、自己が出来上がってきた子がなぜ反抗するようになるのかを見ていきましょう。

 

イヤイヤ期は、一般的には1歳半頃から始まり、魔の2歳児を経て3~4歳までの時期のことです。

 

この時期のイヤイヤ=反抗は、この時期のお子さんの発達段階によって起こります

 

身体能力の発達

 まず挙げられるのが、「身体能力の発達」です。

 

この時期より前のお子さんは、授乳・おむつ交換・移動・・・どれをとっても、自分ではできません。

そのため、泣いたり主張はしたとしても、受け身・待ちの姿勢にならざるを得ませんでした。

 

しかしこの時期になると、歩く・走る・・・と、自分の力で移動が出来るようになります。

 

この時期のお子さんは、急激な運動能力の進歩に支えられて、成長感にあふれ、なんでもできそうな自信を持っています

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「もう俺は誰にも止められない!」みたいな思いを持っていますが、実際にはなんでもできるわけではなく、制止をされることもあるので、反抗することになってしまいます。

 

言語面の不十分さ

 次に理由として挙げられるのが、「言語面の不十分さ」です。

 

この頃のお子さんは、欲求や感情を表出することができてきます。

しかし、その表現方法は不十分ですし、その理由を説明するということはまだ難しいです。

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そのため、養育者に先回りしてやられてしまったり、理由も聞いてもらえずに制止されてしまったりということが起こり、それが反抗に繋がってしまいます。

 

このように、お子さんは、何が何でも反抗しているというわけではありません。

(そう見えるかもしれませんが(^^;)

お子さんは、何かしら自分の意思が通らなかったことに我慢ができないということです。

お子さんがイヤイヤ反抗しているのには、お子さんなりの確かな理由があります。

 

イヤイヤにはどう対処すればいい?

 

では、この時期にどのような対応をすればよいのかということですが、まずは望ましくない対応についてご説明します。

 

NG:なんでも言う通りにさせる

 お子さんの反抗をすべて通してしまうと、2パターンの望ましくないことが起こることが想定されます。

 

1つ目は、「自己主張が激しくなり、手が付けらえなくなる」です。

これは簡単に想像できますよね。

「反抗したら要求が通る」ということの学習になってしまっていたら、その後も同じやり方を繰り返してしまうでしょう。

 

2つ目は、「どうでもよい子なのだという無力感を持つ」です。

反抗は自己主張の1つの方法です。

そのため、反抗がすべて通るということは、「打っても響かない」という状態になり、お子さんに「私なんていてもいなくてもどっちでもいいんだろう」と思わせてしまいます。

学園ドラマなんかによく出てくる、裕福ないじめっ子は、この状態なのかも知れませんね。

 

NG:力で抑えつける

 イヤイヤ期の反抗をわがままだと捉え、暴力や叱ることで抑えつければ、即効性はあるでしょう。

しかし、これではせっかく育っている自己をないがしろにしてしまっています。

 

反抗を通しすぎて「なんでもできる」と思わせすぎても良くありませんが、抑えつけすぎて「自分の思いは何も叶わない」と思わせてしまうことは、「何をやっても無駄だ」「生きている価値がない」と自己肯定感を低下させることに繋がってしまう可能性があります。

 

この点では、「無視しているうちに収まるだろう」という方法も同じことが言えるでしょう。

 

OK:養育者との衝突で「自制」の練習をする

 高橋氏は、

せっかく自己を主張しているのですから、子どもが何を言いたいのかを理解しようという姿勢が大人には必要です。

 と述べています。

 

そして、その理解したことをもとに、養育者の自己と子の自己が衝突をします。

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養育者は、ダメな時には理由と共に「ダメであること」を明確に伝え、なし崩し的に譲ることにならないようにしなければなりません。

お子さんの言い分をしっかり聞き、どちらかの主張を無条件で通してしまうのではなく、互いに妥協点を探して調整していきます。

 

子どもの自己は親の自己としっかり衝突し、互いに無理がないところで調整する体験をすることが重要

 ということです。

 

時には、この記事のように、お子さんが妥協点で落ち着くことができることをそっと寄り添って待つということも必要になるかもしれません。

 

この養育者とのやり取りを通して、お子さんは自制=我慢を学んでいきます。

無条件で通ってしまうでも、抑えつけられるでもなく、落としどころを見つけて乗り越えることができたという経験を重ねることで、「全てが叶うわけではないけど、私は価値がある存在であり、この先にも良いことが待っている」という自己を作っていくことができるでしょう。

 

また、養育者との関わりを通して、「自分も相手も大切にする」という感覚も経験することができるでしょう。

 

イヤイヤ期には、養育者も自己を問われる

 イヤイヤ期は、お子さんがそれまで作り上げてきた自己と養育者の自己が衝突し、落ち着いていくことで、お子さんが「自制する力」を獲得していくプロセスです。

 

ということは、お子さんの自己と衝突させるためには、養育者も自己を明確にしなければなりません。

お子さんの要求や犯行に対して、場当たり的な対応をするのではなく、自身の信念に基づいたブレない対応が必要になります。

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とはいえ、自己は人が試行錯誤して生涯を通して作り上げていくものなので、完璧な自己を求める必要はありません。

養育者側がいつでも正しいと考えることなく、お子さんの考えもリスペクトすることと、ブレないということになっていれば良いと思います。

 

イヤイヤ期は、「ずっと続くわけではない」ということを念頭に置いてお子さんに対応しながら、養育者側も「この子に寄り添い、支えていく」という自己を確立させる時期と言えるでしょう。

この記事は、『子育ての知恵 幼児のための心理学(高橋恵子、2019)』から学んだことの記録です。

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