もしあなたの周りに、悩んでいる人や、落ち込んでいる人がいたら、どうしますか?
そおっとしておいてあげますか?
楽しい話題を振ってみますか?
悩んでいる、落ち込んでいるの究極の場面は、「自殺」です。
今回は、自殺対策の研修などで紹介されている、悩んでいる・落ち込んでいる人への働きかけ方をご紹介します。
なお、この方法は、自殺のような究極に切羽詰まった人専用のものではありません。
ご家庭や職場でも使うことができる方法なので、悩んでいる・落ち込んでいる人に声を掛けてあげたいと思ったときにはぜひご活用下さい♪
TALKの原則
『TALKの原則』は、自殺リスクが高い可能性がある人に働きかける際の心得として、自殺対策の研修などで紹介されているものです。
『TALKの原則』は、働きかける際に大切なことの頭文字を取ったもので、「伝える」という意味の英語の「TALK」と同じつづりで、「トークの原則」と読ませています。
『T』はTell。
『A』はAsk。
『L』はListen。
『K』はKeep Safeです。
では続いて、1文字ずつご紹介していきます。
T:Tell=話す
見て見ぬふりをせず、心配していることを声に出して伝えます。
自殺につながるような切羽詰まった状況に限らず、悩みを打ち明けられたら、「話しに触れない」「話しをそらす」「そっとしておく」という対応は望ましくありません。
これらは、「暗い気持ちを切り替えて欲しい」という良かれと思っての対応だと思います。
しかし、された相手は「そうだよね…。こんな暗い話、誰も聞きたくないよね…。」と塞ぎ込んでしまう可能性があります。
この場面では、「聞いてもらえた」「私は一人じゃない」と思ってもらえるように働き掛けることが大切です。
具体的な働きかけ方としては、「私」を主語にした「I(アイ) メッセージ」になるように意識すると良いと思います。
「(私は)あなたのことが心配です。」
「(私には)疲れているように見えました。」
「(私は)困っていることがあったら相談してほしいです。」
など、率直で誠実な自身の気持ちを伝えます。
A:Ask=尋ねる
困っていることや気持ちを率直に尋ねます。
これをするためには、様々な工夫が必要になります。
なぜなら、
「困っていることはありますか?」
というダイレクトな質問で答えてくれる人は少ないからです。
この質問では、ほとんどの人は「大丈夫です」と回答して終わりです。
「困っている」ということは、「弱み」だったり「自分の非」だったりということもあるので、正面から聞かれると否定しがちです。
そこで、「そうなんだよ、実はね…」と話しやすくなるための工夫が必要になります。
工夫1:身体から入る
心の話に比べたら、身体の話は格段にしやすいと思います。
ダイエットや血糖値の話しの方が、うつっぽかったり夫婦の不仲の悩みより言いやすいですよね。
「眠れてる?」
「食べれてる?」
など、身体の話から入って聞いているうちに、「実は眠れないのには理由があってね・・・」と核心の話しをしてくれることもあるでしょう。
工夫2:雑談から入る
これも、いきなり核心に切り込まないというやり方ですね。
雑談をしながら、悩みの全貌が見えてくることが狙いです。
まったく関係なさそうなエピソードが後々繋がったりということもあります。
工夫3:Why⇒How
「Why=なぜ」は責められたような印象を与えやすい質問です。
これを、「How=どのように」に変えると、「教えて」というやわらかい印象になります。
例えば、あなたがダイエットをしているとします。
「なぜケーキを食べたんですか?」
と聞かれたら、問い詰められてる、責められている感じがしませんか?
でも、ここで、
「どのようにしてケーキを食べることになったのでしょうか?」
と聞かれたらどうでしょうか?
「あなたにも理由があったんだろうから、教えてくれない?」
というニュアンスに感じませんか?
このように聞かれた方が、
「ちょっと職場で嫌なことがあって、帰り道にあるケーキ屋でつい・・・」
と言いやすくありませんか?
この「How=どのように」は、お子さんや部下が相手の時にもとても有効です。
「なんで忘れ物したの?」
「なぜミスをした?」
言いがちですが、とても答えにくいです。
ぜひ、
「どのようにして忘れ物をすることになってしまった?」
「何がどうなってミスが起こった?」
このような答えやすい聞き方をして、経過を教えてもらいましょう。
工夫4:具体例を出しながら
「例えば~とか、~とか、そんなことはありませんか?」
というように、具体例を出して、きっかけを作ってあげます。
例がある分、「そうそう、そんな感じで・・・」と話しをしやすくなります。
しかしこれは、話を引き出すためのテクニックではありますが、誘導ともいえるので注意が必要です。
1つの方向に誘導したことにならないように、「~とか、~とか」と複数の例示をした方が良いでしょう。
L:Listen=聞く
辛い気持ちを受け止め、傾聴します。
話しを聞く際のNG行動が以下のようにあります。
『ながら聞き』
何かをしながら話しを聞くことです。
真剣に聞いてもらえていないという印象を与えてしまいます。
『お話泥棒』
「わかるわかる、私もね・・・」と自分の話を始めてしまうことです。
相手の話をする機会を奪ってしまいます。
『否定』
「分かってもらえない」と思わせてしまいます。
『指導』
「ウザい」と思われるだけです。
「お話泥棒」にもなってしまいます。
つまり話しを聞くときは、
「相手の方を向いて、共感的に、最後まで」が大切です。
反対に、理想的な聞き方は、「うなずき」と「要約」でリズムを作ることや、「感情にフォーカスする」といったものです。
相手を乗せ、「それでね・・・」と話しやすい雰囲気を作ります。
K:Keep Safe=安全を確保する
その人の状態が良くないと感じたら、その人の安全を確保して必要な対処を行います。
もし、相手が自分で悩みを聞くレベルではなく、専門機関を紹介すべき状態であると判断できた場合には、その人に寄り添いながら適切な機関に繋ぎます。
この際の注意事項としては、
「元気な頃のその人を基準にしない」
ということです。
エネルギーが低下した状態の人は、判断能力や記憶力も低下しています。
そのため「この人ならこのくらいの繋ぎ方でいいだろう。」とその人の元気な頃を基準に判断すると、支援に繋がらなかったりしてしまいます。
同行する、地図を渡すといった対応が必要になるかもしれません。
『ゆっくり・丁寧に・わかりやすく』が大切です。
まとめ
今回は、自殺対策の中で紹介される悩んでいる人への働きかけ方『TALKの原則』をご紹介しました。
「K」の「安全の確保」は、うつ病・自殺といったリスクが高い方用ですが、それ以外の「T・A・L」は、家庭・職場など日常の悩みごとを抱えた人に対してもとても有効な原則です。
「T・A・L」を使えば、その問題が解決するかは分かりませんが、少なくとも悩みを抱える人に悩みを吐き出す機会を提供し、「心配してくれる人がいる」「孤独なわけではない」ということを感じてもらうことができます。
悩んでいる人・困っている人が周りにいたら、ぜひご活用下さい☆