こんにちは、心理士YUKAHISAです☆
今回は、「お子さんのお話を『誘導』せずに聞くためには、こんな聞き方をしてみてください☆」というお話です♬
お子さんのお話、正確に聞くことができていますか?
実はコレ、とっても難しいんです。
なぜなら、「お子さんの目を見て、誠心誠意しっかり聞く」ということと、「正確に聞く」ということは同じではないからです。
お子さんに投げかける何気ない質問が、実はお子さんを『誘導』してしまっています。
お子さんのお話を正確に聞くためには、押さえなければいけないポイントがあります。
*なお、この「ブログのコンセプトから」、また「子どもは特に誘導されやすいから」という理由で、子どもから話を聞く場面を想定して進めていきますが、ここでご紹介するポイントは、上司と部下、夫婦、友人同士など、どんな関係においても有効なものです♪
Tell me about 〇〇!
子どもの話を正確に聴くことが難しい理由
(1)人の記憶は簡単に歪む
お子さんのお話を正確に聴くことが難しい理由の1つ目は、人の記憶は、働きかけられる方法によって簡単に歪んでしまうからです。
働きかけられる方法で記憶が歪んでしまうことについては、実験も数多くされています。
①交通事故の映像についての実験
交通事故についての映像を見せ「壁に当たった車は、どのくらいのスピードで走っていましたか」と質問するグループと「壁に激突した車は、どのくらいのスピードで走っていましたか」と質問するグループを比べると、「激突した車」と質問されたグループの方が、車のスピードを速く答えました。
②写真を見せながらエピソードを話してもらう実験
写真を見せながらエピソードを語ってもらうことを依頼した際に、事前に家族から借りた本人の写真で作った合成写真を見せても、多くの参加者は実際にやったことがあることのようにエピソードを語りました。
これらの実験のように、働きかける方法によって、人の記憶は簡単に歪んでしまいます。
(2)子どもは大人の期待に応えようとする
人は誰でも、相手に「No」とは言いにくいですよね。
できる限り相手を否定はしたくないとみんな思っています。
そのため、推測を入れながら「〇〇かしら?」と聞かれた人は、「ちょっと違うんだよなぁ」と思いながらも、「まぁ大体そんな感じです」のような「Yes」の回答をしてしまうことが多いです。
そして、お子さんはこの傾向が特に強く、親や先生など、自分が信頼している人からの質問に対しては「Yes」と答えてしまいがちです。
(3)話を終わらせたくて「Yes」と言いがち
乱暴な取り調べが許容されていた時代には、長く取り調べを受けている容疑者が、「もうやったってことでいいです。」のような「Yes」によって冤罪になったりもしていますよね。
お子さんも、お説教のような長く拘束されている時だけでなく、「テレビがみたい」とか「めんどくさい」といったシンプルな理由で「もうそれでいいよ。」と「Yes」の回答をしてしまうことが珍しくありません。
お子さんのお話を正確に聞くために
話を正確に聞くことが難しい理由の(1)・(2)・(3)には共通点があります。
それは、働きかける側が誘導しているということです。
(1)は、言葉の選択や情報を歪めることによって誘導しています。
(2)・(3)は、推測や決めつけた考え方を投げかけることによって誘導しています。
つまり、「正確に話を聞くためには、誘導しない」ということになります。
当然のことなのですが、とても大切で、とても難しいことです。
誘導しない話の聞き方
相手の使った言葉だけを使って聞いていく
誘導しない話の聞き方とはどのようなものでしょうか?
ポイントとなるのは、「相手の使った言葉だけを使って聞いていく」ということです。
言葉の選び方によって、歪みが生じてしまいます。
相手が使っていない言葉を使うと、誘導になってしまう可能性があります。
そのため、「相手が使った言葉だけを使って聞いていく」ようにします。
例えば、「A君に叩かれたぁ。」とお子さんに言われたら、「叩かれた」という言葉を使わなければなりません。
ここで「殴られた」に変えてしまったりすると、印象が変わって誘導になります。
いけるところまで「Tell me about ◯◯?」
続いては、「相手が使った言葉を使ってどうやって聞いていくか」です。
その方法は、「Tell me about ◯◯?」という聞き方です。
一括りにできるので英語で表現しましたが、「〇〇について話して・聞かせて・教えて」や、省略して「〇〇って?」のような聞き方です。
〇〇のところは、相手が使った言葉を使います。
例に出した「A君に叩かれたぁ。」の場合だと、
「A君に叩かれたことについて聞かせて」という感じです。
一切誘導になっていないですよね。
例えばこの場面で、「叩かれたのは顔?頭?」と聞いたりしたら、誘導になります。
叩かれたのは肩かもしれないからです。
「話を正確に聞く」という点では、「誘導」という言葉が意味するものは、何かしらの方向に話を導いてしまうことだけではありません。
選択肢を狭めてしまうだけで、それはもう「誘導」になってしまうので、注意が必要です。
「Tell me about ◯◯?」の使い方
「Tell me about ◯◯?」という聞き方で、どのように進めていくかということですが、「広いところから狭めて深めていくということを繰り返す」というやり方で、全容を把握していきます。
まず、全体について話してもらいます。
そうすると、全体のお話が、いくつかのエピソードに分かれます。
そのエピソードについて聞くと、それがまた小さなエピソードに分かれます。
この作業を繰り返して、いけるところまで「Tell me about ◯◯?」で聞いていきます。
いけるところまで「Tell me about ◯◯?」で聞いていって、内容・相手の説明する能力からして限界まで小分けになったところで初めて、相手が使っていない言葉を使って選択肢を示します。
例えば、「腕を叩かれたこと以上に聞くのは能力的に難しい」となったら、「あなたが叩かれたのは、右の腕?左の腕?」と質問したりします。
この場面でも、選択肢は限界まで広げた状態で聞きます。
なので、「右腕を叩かれた?」と聞くのは間違いです。
叩かれたのが左腕だった場合に、答えにくくなってしまうからです。
プロのガチな聞き取りの場面であったら、「右の腕?左の腕?それ以外?」と聞く場面です(;^_^A
話を正確に聞くことの大切さ
司法の業界の方や、虐待についてお子さんから話を聞く児童相談所の職員などは、事実を確認する際にはここで説明した方法+αの方法で、細心の注意を払って聞き取りを行っています。
普段のお子さんとの会話をここまで気をつけてする必要はありませんが、「誘導しない」「決めつけない」ということは、大切なことだと思います。
誘導・決めつけがあると、お子さんは「分かってもらえない」という気持ちを持ちます。
そして、「分かってもらえないから話さない」という悪循環が生まれてしまうこともあります。
忙しい毎日の中では、お子さんの話の途中で「はいはい、こういうことね。」とまとめて終わらせたくなる場面も多いと思いますが、誘導・決めつけをせずに、お子さんの話しを丸ごと受けとめるということを、可能な範囲で意識していただければと思います。
※「話を聞くときにカウンセラーが気をつけていること」シリーズ♪