子育て・育児や対人関係に役立つ心理学のテクニック

「子育て・育児や対人関係に使える!」と感じた心理学のテクニックを整理していきます♪

リストカット(自傷行為)のメカニズム

『リスカ』という言葉を知っていますか?

 

手首の辺りを自ら傷つける『リストカット』という行為の略です。

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『リストカット』は、自分の身体を自ら傷つける『自傷行為』の1つです。

 

中高生を対象とした複数の調査をまとめると、「10代のおよそ10人に1人」=「10代の約1割」の子が「わざと自分の体を刃物で傷つけたことがある」と回答しています。

 

つまり、程度の差はあるものの、自傷行為をしたことがある子がクラスに2~3人はいるということです。

 

リストカットを中心とした自傷行為は、大人が気づいていないだけで予想以上にお子さんの身近な所にあり、お子さんやお子さんの友達が経験する可能性だって否定できません。

 

そのような時に備えて、リストカット・自傷行為についての正しい知識を持っておいていただければと思います。

この記事は、『自傷・自殺のことがわかる本 自分を傷つけない生き方のレッスン(松本俊彦(監修)、2018)』から学んだことの記録です。

リストカット・自傷行為=アピールは間違い

 「リストカットはアピール」「リストカットは『かまってちゃん』がすること」

 

そう考えすぎることは危険です。

 

確かに、リストカットという行動を注意を引くための手段として身につけてしまった人もいます。

しかし、10人に1人が経験しているということを考慮すれば、ほとんどのリストカット・自傷行為は隠れて行われているということになります。

 

それに、アピールであったとしても、リストカット・自傷行為という行動を選ばざるを得ない状況であるならば、その人にはケアが必要でしょう。

 

海外の研究によれば、10代での自傷行為経験者の、その後10年以内の自殺リスクは、自傷行為未経験者の数百倍になるとのことです(Owensら、2002)。

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見えるリストカット以外は起こっていないと考えることは危険ですし、見えているリストカットに対して「アピールだから放っておけばいい」と捉えることも危険です。

 

なぜリストカット・自傷行為をすることになる?

 妙な表現ですが、リストカットに代表される自傷行為では、普通は死ねません。

つまり、リストカット・自傷行為は自殺のための手段としては確実性は低いです。

(アクシデントが重なって大事故になることはありますので、「死なないからOK」というわけでは当然ありません!)

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そしてやっている本人も、「死のう」と思ってやっている場合は稀です。

 

リストカット・自傷行為は「死にたいくらい辛かったり、悲しかったり、大変だったり」という気持ちから起こっていることが最も多いです。

 

リストカット・自傷行為をした際に、どのような気持ちの変化が起きるのかというと、多くの経験者が教えてくれるのは、「スッキリする」「ホッとする」という変化です。

 

リストカット・自傷行為は、当然「痛い」です。

体に痛みが生じると、脳は身も守るために、気持ちどうこうではなくて痛みに注目するようになります。

体の痛みに注意が向くと、心の痛み(不安、イライラ、モヤモヤ…)を考えずに済むようになるということです。

こうやって、「リストカット・自傷行為をすると、スッキリする・ホッとする」という状態が出来上がります。

 

多くの人にとって、体の痛みは不快な感覚です。

不快な体の痛みの方が「まだまし」と思えるほど心の痛みが強い時に、自傷行為・リストカットは起きるということです。

 

その点では、リストカット・自傷行為は、押しつぶされそうな心の痛みから逃れるための行動であり、「生きるために切っている」という状況と言えるでしょう。

 

なぜリストカット・自傷行為は繰り返される?

 リストカット・自傷行為という方法を体験してしまうと、その後もリストカット・自傷行為に頼りがちになってしまう人が多いです。

参照している『自傷・自殺のことがわかる本』の監修者である松本俊彦氏によれば、自傷行為経験者の6割は、自傷行為を10回以上行っているという調査結果があるそうです。

 

それはなぜでしょうか?

 

「行動の理論」による説明

 1つ目の理由は、「行動の理論」で説明できます。

 

この記事で、行動が継続されるためには、良い気もちになったり、自己効用感を得られたりと共に、やりやすさが大切であるということをご紹介しました。

 リストカット・自傷行為は、不安やイライラを和らげ、また自分の部屋などであればいつでもすぐ実行できるということで、行動が継続される条件を満たしていると言えるでしょう。

 

「依存症」による説明

 また、「依存症」という観点からも説明できます。

 

リストカット・自傷行為を繰り返す人は、「脳内麻薬」と言われる物質の1つ、「エンケファリン」の血中濃度が高めであることが明らかにされています。

 

リストカット・自傷行為の強い痛みによって「エンケファリン」が分泌され、不安や緊張が和らぐということを経験すると、より「エンケファリン」を分泌させるためにリストカット・自傷行為をくり返すということになってしまいます。

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この状態を、「脳内麻薬依存症」と言います。

 

リストカット・自傷行為をしている子をどう支援する?

 ここまで見てきたように、リストカット・自傷行為は、「生きるためにその人なりに身につけた解決方法」という言い方ができます。

 

そのため、「リストカット・自傷行為はダメ、絶対!」では、ただその人から解決策を奪っただけになってしまいます。

 

支援者がすべきことは、リストカット・自傷行為をしている人が、「リストカット・自傷行為を使わずに心の痛みに対応できるようになる」ことを支援することです。

 

最も理想的な形は、「充実した生活を送っているうちに、リストカット・自傷行為をしなくなっていた」となることでしょう。

 

そのために支援者にできることは、その人の心の痛みを聴き、より良い方法を一緒に考える」ということです。

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やはりこのような局面では、特効薬のようなものはありません。

その人の心の痛みを丁寧に聴き、リストカット・自傷行為をせざるを得なかった苦しさに共感するところから支援は始まります。

 

この際には、これらの姿勢やテクニックが有効でしょう。

 リストカット・自傷行為をしている人も、やりたくてやっているわけではありません。

しっかりと共感し、「一緒に考える仲間である」と分かってもらった後で、「リストカット・自傷行為に頼らない生活を送ることができるように一緒に考えたい」と提案します。

 

そして「一緒に考える」という関係性が作れたら、具体的な対策を考え、その結果を検証するということを繰り返していきます。

 

具体的な対策とは、ストレスの対処方法、余暇の過ごし方、SOSの出し方などです。

リストカット・自傷行為をしたくなるような心の辛さを減らすためにできること、リストカット・自傷行為をしたくならないためにできること、したくなった時にできることについて考えていきます。

 

このようなお話の中から、将来の夢や目標についての話しに発展し、そのための行動を実行できたりしたらとても理想的です☆

不安やイライラに対する対策を取りながら、将来に繋がる行動が増えていき、自信が出てきて、自己肯定感が高まり、自分を大切に思えるようになって、気づいたらリストカット・自傷行為をしなくなっていた、という流れを目指します。

 

まとめ

リストカットを中心とする自傷行為は、不安やイライラを軽減し、生き延びるための手段として身につけられた行動です。

 

そのため、ただ「やめなさい」「生きろ」では、問題は解決しません。

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リストカット・自傷行為を使わなくても、不安やイライラといった心の辛さに対応できるようになっていくことを一緒に目指すということが大切になります。

この記事は、『自傷・自殺のことがわかる本 自分を傷つけない生き方のレッスン(松本俊彦(監修)、2018)』から学んだことの記録です。

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