子育て・育児や対人関係に役立つ心理学のテクニック

「子育て・育児や対人関係に使える!」と感じた心理学のテクニックをご紹介します♪

これも知って欲しい!子育てに役立つエリクソンの発達理論②☆:幼児前期編

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1歳半~4歳頃は、卒乳・トイレトレーニングなど、できるようになってもらいたいことが多い時期です。

その反面、イヤイヤ期と言われる時期でもあるので、それをやってもらうことがとても大変ですよね。

 

発達理論①としてご紹介したエリクソンの理論は、この時期にもとても有効です♪

*「発達理論①乳児期編」はコチラ♪

  

エリクソンの発達理論は非常に有能で、日本で有名な精神科医の佐々木正美先生も色々な本でご紹介されています。

佐々木先生の数ある名著の中でも特別有名な『子どもへのまなざし』も、ベースとなっているのはエリクソンの理論と言っていいと思います。

 

私も、子どもの支援に携わっている時には、担当しているお子さんについての報告書のようなものを書くときにエリクソンの理論は良く引用していました。

 

今回はエリクソンの発達理論②ということで、幼児前期(1歳半~4歳)をご紹介させていただきます♪

佐々木先生の代表作です☆

エリクソンの発達理論

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(写真:Wikipedia)

*この項目は①と同じです(^^;

①からお読み頂いている方は飛ばしてください♪

 

エリクソンは、あの有名なフロイトのお弟子さんで、ユダヤ系アメリカ人です。

 

エリクソンは、アメリカで様々な民族の子育てに触れる機会があり、「子育てにおける大切なことは、どんな民族にも共通している」という結論を導き出します。

 

そして、人間の一生を8つの段階(乳児期、幼児期、児童期、学童期、思春期・青年期、成人期、壮年期、老年期)に分け、それぞれの時期に、成熟・発達していくための主題(発達課題)があるとしました。

 

さらにエリクソンは、このそれぞれの段階の乗り越えるべき発達課題は、それ以前にクリアした発達課題を駆使して達成されていくと考えました。

「心の発達は積み重なっていく」ということですね。

 

また、このエリクソンの理論は、社会性の発達や成熟を考慮しているということもポイントです。

それぞれの発達段階で、必要な他者との関わりを通して人は成長していくとされています。

 

エリクソンの発達理論は、8つの発達段階に分け、それが積み重なっていくということで「ライフサイクル論」と呼ばれたり、社会性も考慮しているということで「心理社会的発達理論」と呼ばれたりします。

 

*「発達理論①乳児期編」はコチラ♪

  

幼児前期(1歳半~4歳頃)の発達課題は、『自律性』の獲得

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エリクソンは、幼児前期(1歳半~4歳頃)に達成すべきことは、『自律性』の獲得であるとしています。

 

『自律性』とは、「自分の衝動や感情をコントロールすること。社会のルールを守ること。」です。

文字通り「自分を律する力」のことです。

 

1歳半~4歳の幼児前期は、卒乳やトイレトレーニングなどのしつけが始まります。

つまり、飲みたいときに飲む、出したいときに出すというわけにはいかなくなります。

 

また、(もっと前からのお子さんもいますが)保育園・幼稚園での他児との関わりも始まり、順番を待ったり、貸し借りをするなど、社会のルールの中での生活も始まります。

 

幼児前期の子どもは、1つ前の乳児期に獲得した『基本的信頼感』を基に、養育者による支援を受けながら、『自身をコントロールする力』を獲得していきます。

 

幼児前期にすべきことは、平たく言うと『我慢の練習』です。

『基本的信頼感』が獲得できていれば、「今は我慢の時だけど、基本的には私の人生はOKだし、我慢の先には良いこともあるだろう。」と捉えることができます。

 

『自律性』を獲得できると・・・

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『自律性』は、「自分をコントロールする力」です。

この力を持つことができれば、「成功するという自信に満ちた期待感」や、「積極的に関わっていこうとする意欲」に繋がります。

 

反対に、『自律性』の獲得に失敗すると、それは「自分をコントロールする力」が養われなかったということなので、「自分自身や環境への無力感」や、「困難な問題に対する選択や決定の出来なさ」に繋がってしまいます。

『自律性』の獲得に失敗すると、いつも誰かに決定や判断を委ねる成り行きまかせの生き方になってしまいます。

 

『自律性』の獲得のためには

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心と手を掛けて待つ

 佐々木正美先生は、『自律性』の獲得のために必要なことは、「心と手を掛けて待つ」ということだと述べています。

 

すべきことや、してはいけないことを根気強く伝えることはしますが、いつからできるのかは子どもに任せてじっと待ってあげるというスタンスが必要です。

 

先回りしてやらせる・やってあげるという対応は、『自律』ではなく『他律』になってしまっています。

失敗せずにできることを増やすための働きかけのつもりでしょうが、「自分でコントロールできる感覚」は育まれません。

 

スタンスは、小さな鉢植えを育てている時と同様なのではないかと思います。

土を用意し、肥料も与えますが、いつ芽を出すのかは本人次第。

ほったらかしにしたら枯れてしまいますし、水や肥料をあげすぎても腐ってしまう。

心と手を十分に掛けたら、後は待つだけです。

 

*しつけにおける『待つ』という対応は、こちらの記事でも紹介しています。

 

環境を操作する機会を奪わない

また佐々木先生は、「健全なセルフコントロールは、子ども自身が「自分の周りの事柄をコントロールすることができる」という感情と一緒になって発達する」とも述べています。

 

これは、言われてみれば当然のことなんですよね。

「何も自分の思い通りにならないし、自分ばっかり我慢させられる」という状態だったら嫌になってしまいます。

自分の希望が通っている部分があるから、「しょうがない、ここは我慢するか」となれます。

1つ前の乳児期に獲得した『基本的信頼感』に基づいた、子どもの「自分の願いは叶う」という気持ちを尊重しながら、枠を作るべき所はしっかり作り、それを譲らないということが大切になります。

 

『基本的信頼感』を獲得しているお子さんは、この時期に、自分で移動する能力と、言葉で主張する能力を劇的に発達させ、なんでもやれる気になっています。

その結果、できもしない無謀なことをやろうとしたり、大人と同じものを求めたりします。

このことによって反抗期・イヤイヤ期といった呼び方もされることにもなります。

 

この子どもの主張を「どうせできないから」とやる前から潰してしまうと、『自制心』の獲得を阻んでいることになってしまいます。

 

この場面で大人がすべきことは、子どもが上手くできるように一緒にやってあげることです。

上手くいけば、環境をコントロールできているという感覚を持つことができ、自制すべきことを自制するための心の余裕が生まれます。

上手くいかなかったとしても、子どもが気持ちを整理することに大人が寄り添うことで、『自律性』の獲得が促されます。

どんな結果になるにしても、子どもの主張を潰さない方が良いということですね。

 

まとめ

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幼児期前半、1歳半~4歳の時期に獲得すべき発達課題は、『自律性』=自分自身の感情や衝動をコントロールする力です。

 

この力は、大人が植え付けることができるものではありません。

大人にできることは、コントロールした先には明るい未来が待っているということを示し、子どもが自ら『自律性』を獲得していく過程に寄り添うことです。

 

大人が手を出せば出すほど、『自律性』の獲得は遅れてしまいます。

 

準備をしっかりしたら、あとは気長に待ちましょう♪

*とっても難しいんですけどね(^^;

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