『発達障害』・・・
医療職や福祉職の人、当事者やその家族以外にもすっかり浸透した言葉になりましたね。
『発達障害』は、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、学習障害などが含まれ、「その子はどんな子か?」を理解するために有用な概念であると言えます。
しかしその反面、とても広い概念のため、『発達障害』という言葉だけでは「その子はどんな子か?」を捉えられないこともあります。
『発達障害』という言葉の持つ意味はとても広い
私は、『発達障害』という言葉を「風邪」や「酒」ぐらい広い意味の言葉だと捉えています。
「風邪」という言葉からは、「何かしらの症状が出ていて、体調が悪いんだろうな。」ということはわかります。
しかし、「風邪」という言葉からは咳が出るのか、鼻水が出るのか、喉が痛いのか、熱があるのかといったことははっきりはわかりません。
「酒」という言葉からも、それが「アルコールが入っている飲料である」ということはわかります。
しかし、ビールなのか、日本酒なのか、焼酎なのか、ワインなのか、ウィスキーなのかはわからないし、それがどこの国で作られたのかやアルコール度数が何%なのかもわかりません。
『発達障害』という言葉も、それと同じように広い意味を持つ言葉だと捉えています。
『発達障害』という言葉からは、「特にコミュニケーションを取るにあたって特徴的な面があり、そのために日常生活を送る上でなんらかの苦手なことがある。」ぐらいのことはわかりますが、どんな特徴的な面があって、どんな苦手さがあるのかはよくわかりません。
1つ前に「適切な対応のためには特性の理解が大切」という旨の記事を書きましたが、『発達障害』という括りは「特性の理解」という点では広すぎる概念だと思います。
『診断名』ではなく、その子を見る
『診断名』というものはどんな診断であれグループに括るということではあると思いますが、『発達障害』というのはその中でも格別に広い意味を持つ括りであると思います。
『発達障害』という括りは、「何かしらの支援が必要な人なんだな。」ということをわかってもらいたい時には非常に便利な言葉であると思います。
しかし、「具体的にどのような支援が必要なのか?」ということを考えるためには広すぎる括りであると言えます。
そしてそれは、「自閉スペクトラム症」や「注意欠如・多動症」という診断名でも同じです。
同じ自閉スペクトラム症でも知的能力の水準やこだわりの強さによって支援方法は大きく異なります。
注意欠如・多動症に至っては、不注意な面と衝動性の高さという別の特性が1つに括られています。
『その子の特性を理解する』ためには、診断名に捉われることなく、「その子はどのような子か?」ということを多面的に理解することが大切です。
どんな診断についても『診断名を見て人を見ない』ということにならないように気をつけなければなりませんが、『発達障害』については特に括っている範囲が広いため、その子オリジナルの診断名の中身を理解する必要があると思います。