子育て・育児や対人関係に役立つ心理学のテクニック

「子育て・育児や対人関係に使える!」と感じた心理学のテクニックをご紹介します♪

発達障害について③:発達障害における『スペクトラム』という言葉

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『スペクトラム』という考え方は、発達障害の特性について誤解なく理解してもらうために非常に有用な言葉だと思います。

 

「発達障害はスペクトラムとして捉える」ということは、10年以上前から言われていました。

そして2014年からは、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-Ⅴの中で、それまで「広汎性発達障害」と括られていたものが「自閉スペクトラム症」という名前に変わり、『スペクトラム』という考え方は診断名に組み込まれるぐらい前面に押される考え方になりました。

『スペクトラム』とは?

この『スペクトラム』という言葉の意味ですが、ネットで検索してみると、

1.可視光及び紫外線、赤外線などを分光器で分解して波長の順に並べたもの。
2.意見、現象、症状などが、あいまいな境界を持ちながら連続していること。

 だそうです(デジタル大辞泉)。

 

ちなみに、私は働き出した頃に受けた研修では「帯。連続体。」という意味であると習いました。

 

これが、デジタル大辞泉の1.の『スペクトラム』です。キレイですよね☆

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(by play.google.com)

どの説明を見ても、『連続していて繋がっている。』ということは共通していると言えるのではないでしょうか。

 

この「帯。連続体。=連続していて繋がっている」ということと発達障害を関連づけて考えると、『スペクトラム』という考え方は『発達障害があるお子さんと定型発達のお子さんの間には明確な境界線はなく、同じ連続体上に位置している。』というイメージであると思います。

発達障害の特性には幅がある

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この『スペクトラム』という考え方は抽象度が高いからか、基礎的な研修を聞くと、講師の方は色々な例え話を使って説明されています。

 

働き出した頃に受けた研修の講師の方は、「建て物の構造」に例えて、「発達障害のお子さんと定型発達のお子さんはスロープで繋がっているような場所で一緒に生活しているというイメージ。別の階で生活しているわけではない。」と説明されていました。

 

この例えは、『スペクトラム』という考え方によって理解すべき発達障害の特性を上手く表していると思います。

つまり、「発達障害のお子さんは別の階で生活しているわけではない。」ということは、『発達障害のお子さんは、「異常」だったり、「違う感じ方・考え方の人間」というわけではない。』ということです。

 

例えば発達障害のお子さんの中には、物の置き場所に強くこだわりを持っているお子さんがいます。

しかし、定型発達の方達だって、動かされたりしても我慢は出来るでしょうが、デスクの上の配置などを何となく決めている方は多いでしょうし、電車で通勤されている方の中には「何となくいつもこの車両に乗ると決めている」という方もいるのではないでしょうか。

 

この例の発達障害のお子さんのこだわりと定型発達の方のこだわりには、極端さには差はありますが、根っこにある「いつもと同じの方が安心」という思いは共通であり、同じ連続体(=スペクトラム)の上に位置づけることができると思います。

 

このように、『スペクトラム』という考え方は、『発達障害があるお子さんの特性は、定型発達の方達でも感じる思いを、極端に・強く・敏感に感じてしまうことによって生じているのであって、全く理解不可能な感覚を持っているわけではない。』ということを理解することを促してくれます。

 

また、(地域は限られてしまうと思いますが分かりやすかったのでもう1つ)静岡県で開業医をされている小児科医の先生からは、「富士山」に例えて説明していると教えていただいたことがあります。

その先生は「発達障害は富士山みたいに考えます。富士山の5合目(車で行くことができる最も高い場所)はどう考えても富士山ですが、その麓の御殿場市(アウトレットがある所です)・裾野市(自衛隊の基地が有名です)・富士市(名前の通りです)などは、富士山なのか。普通の平地よりは高い標高の場所だけど、明確に富士山とは言えません。発達障害も同じで、色々な特徴があって明らかに発達障害だというお子さんもいれば、配慮は必要だけど発達障害とは言い切れないという程度のお子さんもいます。」という説明をされるそうです。

新幹線や東名高速道路で静岡県を通過する際には、窓の外を眺めながら、「確かに、どこからが富士山かなんて言えないなぁ。」と感じてみてください。

この例えは、特に「発達障害のグレーゾーン」と言われるお子さんの親御さんに説明する際には非常に分かりやすく、安心してもらいやすいと思います。

上記の説明に、「そして〇〇くんは富士山の例えでいう御殿場や裾野ぐらいと捉えてもらえればと思います。」と加えることで、親御さんには「発達障害には、特性の強さにその子による差があって、うちの子の場合は発達障害とは言い切れないけど発達障害の特性があるんだな。」と理解していただけるのではないかと思います。

まとめ

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『発達障害』という言葉で括られる方達の特性は本当に幅広く、人それぞれです。
*このことについてはコチラの記事をどうぞ☆

『スペクトラム』という考え方は、その発達障害の方達の特性にある『幅』ということと、『発達障害のお子さんの特性の基となる感じ方・考え方のメカニズムは定型発達のお子さんと共通であり、発達障害のお子さんの特性と定型発達のお子さんの感じ方・考え方は繋がっている。』という、発達障害のお子さんの特性を理解する際の考え方の基本となる部分を示してくれていると思います。

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