「すぐに諦めてしまうことなく、何事にも一生懸命に取り組んでくれるような子どもに成長していって欲しい」と思わない親はいませんよね。
もともと楽観的な子もいれば、慎重な子もいます。
打たれ強い子もいれば打たれ弱い子もいます。
生まれ持ったり環境による要因もありますが、「諦めない子」・「挑戦する子」に育てるために、親の関わり方の工夫でなんとかできる部分もあります。
キーワードは、『マインドセット』です。
著者のケヴィン・ダットンはロンドン生まれの心理学者で、「社会的影響」研究の第一人者です。
本の中では社会的な影響力を利用して相手に思わず「Yes」と言わせてしまうテクニックが数多く紹介されています。
詐欺師も使えるようなテクニックですが、お子さんや部下を望ましい方向に(エゴではなく)導いてあげたいときなどにも有用なヒントが豊富に含まれています☆
成長思考と固定思考
『マインドセット』とは、平たく言うと、「これまでの人生を通して作られた考え方や物の見方の型」といったものです。
スタンフォード大学の認知心理学者キャロル・ドウェックはこのマインドセットを大きく2つに分けました。
1つが、『固定思考』です。
『固定思考』は、「何が自分にできて、何ができないのか、それはもともとの自分の能力によって決まっている」という考え方です。
固定思考の子は、例えば試合の前に、
「あの子には才能があるけど、私には無理。」
と考え、試合の後では、
「負けた。やっぱり私には才能がない。」
と考えます。
固定思考の子は、今できている事を他人に証明する事で自信を保とうとするため、失敗を恐れ、新しいものに挑戦する事を躊躇しがちです。
もう一方が、『成長思考』です。
『成長思考』は、「誰でも、なんでもできるようになる」という考え方です。
成長思考の子は、同じ試合の例で、
「あの子にできるなら私にもできるはず」
と考え、試合の後では、
「負けたけど、多くのことを学んだ。」
と考えます。
成長思考の子は、学び成長していく自分に自信を持っているので、失敗を恐れず、目標の一つために努力できます。
またドウェックは、次のようなそれぞれのマインドセットの傾向を確認するための実験もしています。
この実験の対象は学生で、固定思考か成長思考のどちらかの講義を受けた後で難しいテストに挑戦してもらい、その後で「他の人の答案を見たくないか?」と質問されるというものです。
結果は、固定思考の講義を受けた学生は自分より成績の悪い人の答案を見ることを希望する傾向がありました。
これは、固定思考の人は周りとの比較で自分より劣った人を見て自尊心を保とうとするということを示しています。
反対に成長思考の講義を受けた学生は自分より成績の良い人の答案を見ることを希望する傾向がありました。
これは、成長思考の人は成長のために優れた人を見て将来のための知識を吸収しようとすることを示しています。
次にドウェックは、同じ参加者を対象に脳波を調べる実験を行いました。
この実験は、参加者にクイズを解いてもらい、正解/不正解と解説を説明するという流れの間、脳波を観察するというものでした。
この実験から分かったことは、固定思考の講義を受けた学生は正解かを聞いた途端に脳の活動が止まりますが、成長思考の講義を聞いた学生は解説を聞いている時にも脳が活動していたということです。
つまり、固定思考の人は「自分が正しいか」を気にするだけでしたが、成長思考の人は知識の吸収を続けていたということです。
平たくいうと、固定思考の人を現す言葉は「保身・比較」といったもので、成長思考の人を現す言葉は「成長・挑戦」といったものです。
親の働きかけで成長思考を作り上げる
固定思考と成長思考、お子さんになって欲しいのはどちらですか?
成長思考ですよね♪
ほとんどの場合、子どもは大人がしなくても、徐々に・自然に状況に適応し、妥協したり、帳尻を合わせたりしていきます。
その点では、「失敗した時にすぐに起き上がることができるように目一杯の愛情を注ぎながら、成長思考を養っていく」ということが良いのではないでしょうか。
成長思考を養っていくためのポイントは2つです。
その1つが、「能力・才能の限界を設定しない」ことです。
「私達の子なんだから、無理よ。」といった限界を設定するような投げかけが繰り返されると、「そんなもんかなぁ。」と思うようになり、本当にそうなってしまいます。
思うことすらしなくなったら、絶対にそのことはできません。
「あなたには無限の可能性がある」ということをアピールし、子どもが良い未来を考えることを妨げないことが大切です。
そして成長思考を養うためのポイントのもう1つは、「プロセス・過程に焦点を当てる」ことです。
とくに、努力や挑戦に焦点をあてます。
努力や挑戦といったプロセスを評価することで、子どもに「間違ってなかった。これからも頑張ろう。」という感覚を持ってもらいます。
意識しないと「100点だね!すごいね!」と結果を評価した褒め方になってしまいがちです。
ここで、「100点だね!たくさん勉強したもんね!」とプロセスを評価できるようにしたいです。
そうすると、「努力が結果に繋がった」ということを実感してもらえるでしょう。
*思い込み(=固定観念)を変えることについての記事はコチラです。
まとめ
「無限の可能性をアピールし、努力や挑戦を称える」ということを積み重ねることで、成長過程は養われていきます。
ポイントを意識することさえできれば、難しいことをしているわけではありません。
「無限の可能性をアピールし、努力や挑戦を称える」ということを意識し、受験や部活など、壁を乗り越えるということが必要な場面で踏ん張りが効く子どもに成長していってもらいましょう!